まみむめも
間違いを犯す時、案外人は躊躇わないものだと、知った。引き止めるものがあればと小さな声で思っても、初めから自分で、一人だけのものにしたのだ。誰が介入するわけもない。僕は釣り上げられる魚のように、意思もほとんど持たないまま渇望した空間へ入っていった。
見つめることが上限だと思っていた。あの生垣の前にただ立つだけで、心ははちきれる寸前まで膨満していた。今、境界を越えて陽の光の届かない室内で己の肉を晒していることは、僕の器に収まりきらない夢幻だ。理由もない。溶かすように衣服を脱がす少女は、誰なのか。
無垢でない笑顔で「脱がせたい、それとも脱いで欲しい」と問うてくる少女には、どこか知ってる面影がある。真っ白いワンピースは肩のあたりが細く、少し撫ぜるだけで落ちるだろう。操られるように伸びた指先が、少女の肌に接触した途端、体が自分のものでなくなっていくのを感じた。
めまぐるしく床に倒れ、絡まった。ここは、夢にまで見たあの人の屋敷。挨拶も思い浮かべられなかった桃源の世界だ。壁からも天井からも甘い匂いが立ち上る。どこよりも強く発せられる少女の脇に顔を埋めて、舌で鼻と口に運んだ。少女の腕は僕が掴み上げる形のままに歪み、馴染んだ。
靄が湧くようなうねりが、全身を揉んだ。貫きの準備に体を離すと少女と目が合った。「ユキ子というのよ」益々深まった笑顔に、とうとう願いが重なった。心を締め付け続けたものと同じ、あの人と同じ、顔だ。カッと熱くなった体を狭い穴に押し込め、暗がりを進んだ。戻る道は消える。消える。消える。
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