あいうえお

あやとりを繰る指がまるで遠隔的におれの体の中をかき回しているような、幻惑に落ちていた。畳の部屋の真ん中に座したユキ子を、11時の方角から見ていた。庭の緑が陽に乗じて入り、ユキ子の前であえなく消える。おれの影もユキ子の方へ伸びているのに、その体にかかる前に途絶えている。

いけないいけないと思い、首を振れば意識は立ち直るが、見続けるとすぐに絡みとられてしまう。視線をそらすことがひどく重苦しかった。引かれるのだ。磁力のように、強く、そこへ。

うつむいていたユキ子は、突然髪を揺らしながらおれを見上げた。ひどく乱れたおれの瞳を見て、なんと、生け簀の魚を見るように笑ったのだ。

笑みを浮かべまま、両手を顔の前までかかげてひらひらと指を絡める。その隙間を引くたこ糸が、ギリギリとおれの腰のあたりを締め付けている。見えないけれど、きっと。

男であることを思い知り、女であるユキ子を東京タワーの輪郭にすかして、この肌寒いのが秋風のせいだと気がつくのは翌朝になってからのことだった。



白状

申し上げます どうかこれきりと願います

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