重圧

ロビーでだらだら学友共と話しているときに、そいつは俺の隣にいた。

頼んでないのに良い笑顔。喜ばしい態度の押し売り売女。俺はこいつのことなんか好きじゃないのだから、しなだれかかられても嬉しくも何ともないのだが。

俺の心は夜も深い真っ暗闇なのに、赤い唇が下弦に揺らめいて傷を付けようとしてくる。

近づく二つの穴は凶器だ。狂気だ。

ソンナ顔デ見ナイデクダサイヨ。

死ニタクナルジャナイデスカ。

死にたくないから俺は思わず自分の手で自分を守ったのだ。

赤い唇は離れて代わりに赤い放物線が俺のTシャツを汚くした。お気に入りなのに。ムカつく。

うずくまる女は誰がどう見ても被害者で、その隣でポケットの中の煙草を探る俺はどう見ても犯罪者。

しかし喧騒は俺の鼓膜とは違う次元にあった。遠く遠く何枚もの膜を隔てた世界で立っている地面はやけに厚みがあって不安定だ。

Tシャツにすがりつかなかった血液が足元に点々と散らばる。

単純に純粋に、汚れてんなぁと思いながら、俺はあいつに殴られたいと思った。

女の子を殴るのは最低です。

最低な俺をお前が殺してくれよ。

アアヤッパリモウ一度会イタイデス。

煙が肺を灰にして灰色な空の下地面を蹴り上げた。

雨が降りそうで嫌だった。

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